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ある貸本屋の閉店

  • Posted by: jinx
  • 2005年2月 1日 15:40

その店は、夕方になると子供達で溢れていました。

なかよし文庫、午後四時開店、日曜祝日はお休み。

学校帰りの子供達を楽しませてきた、下町の貸本屋さんです。

今はもう本は買うものであり、借りるものではなくなりましたよね。
それに、借りようと思えば、殆どの町には立派な公立図書館がありますし、図書館ならもちろん無料で本が借りられるわけです。
それに、今どきの子供が「本が欲しい」、「読みたい」と言えば、両親やおじいちゃんおばあちゃんは喜んで本を買ってくれるでしょう。大人にしてみれば、ゲームなんかで時間を潰しているより、読書をして頂いた方が何百倍も嬉しいわけです。

私も下町育ちですが、私が子供の頃は残念ながら近所に貸本屋さんはありませんでした。
昔はたくさんあったようですけど、私の頃には貸本屋さんはもうマイナーな存在になっていましたねぇ。
この"なかよし文庫"が21世紀まで続いたのは、オーナーの方のご努力があったからなのでしょう。

私には殆ど貸本屋さんの体験は無いのですが、親類の住む町でお兄ちゃんやお姉ちゃんに連れられて行ったかすかな記憶はあります。たしか、貸本屋さんで借りる本って、実は、親が買ってくれたり、図書館に置いてあったりするのとはちょっと違った本、だった気がします。
はっきりと覚えてないんですが、子供の心をワクワクさせる、そんな本で溢れていたような。

レンタル・ビデオやCD、テレビ・ゲームなんて無かった時代に、学校帰りの好奇心溢れる子供達の興味を繋いだのは、こんな貸本屋さんだったのでしょう。
家に帰って、小遣いの小銭を握りしめて、なかよし文庫に走ったこども達。
小さな店先や、狭い店内は、どの本を借りようかと"うろうろ"する彼らで溢れていたのでしょう。どんな本かちょっとめくっているうちに、面白くなって、店先で読みふけっている子もいたかもしれません。
ここのオヤジさんは、怖かったんですかねぇ。「立ち読みはダメだよ」とか言いながら、ハタキでぱたぱた。それとも、店の奥でじっとしていたんですかねぇ。子供達が、ヒソヒソ噂するんです、「ねぇ、寝てんゃないの?」、「死んでるかもよ」、「あ、動いた!」


店の中から何十年も地元の子供達を見つめてきたオヤジさんも、この三月でお店を閉めることにされました。お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

路地から子供達の姿が減って、彼らが居た景色も少しずつ変わっていきます。
そうやって私たちの時代は時を刻み、子供達も大人になります。
でも、想い出は消えません。
特に、楽しかった想い出は...


もうすぐ午後四時です。
なかよし文庫が、開店する時間です。

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